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名古屋家庭裁判所 昭和38年(少)530号 決定 1963年2月20日

少年 M子(昭二二・三・三生)

主文

少年を名古屋保護観察所の保護観察に付する。

理由

(非行事実及び適条)

少年に対する当庁昭和三七年少第三九三六号、第四二〇九号窃盗、売春防止法違反保護事件についてなされた昭和三七年九月一二日付中等少年院送致決定書記載の非行事実(同年七月七日現金四、九〇〇円入財布一個の窃盗及び同年八月一六日夜通行人に対する売春の勧誘)及びその適条といずれも同じであるから、ここにこれを引用する。

(本件受理に至るまでの経緯)

本件については、さきに前記窃盗、売春防止法違反保護事件として昭和三七年九月一二日審判開始のうえ中等少年院送致決定がなされたところ、同月一九日少年(当時明徳少女苑在苑)から「自分が中等少年院に送致されたのは、審判の際身柄引受人が決定していなかつたためであるが、その後親族らが相談した結果、父方の伯母夫妻が自分を引取り将来の面倒も見てくれることに決まつたから、改めて審理されたい」ことを要旨とする抗告の申立がなされたため、名古屋高等裁判所に昭和三七年(く)第三一号保護処分に対する抗告事件として係属し、審理の結果昭和三八年二月七日別紙(参考五)決定書記載のとおり、原決定を取消し、本件を当庁へ差し戻す旨の決定がなされたものである。

(要保護性等)

少年は、幼時母親(離婚)と生別した後、丸○源○(五三歳、土工、滋賀県犬上郡在住)の養子となり、その庇護を受けて生育したが、知能が低く、性怠惰のため学校にも充分親しめないまま、しばしば怠学しては殆んど無為に日を過ごすうち、次第に遊惰、浪費の傾向をつのらせ、中学校進学後は隣家等から度々金員を窃取しては浪費し、または、年長の異性らと交遊しては、しばしば深夜まで遊び歩き、注意されると反抗的態度を示して養親らを苦慮させていたうえ、昭和三七年三月中学校を卒業して愛知県一宮市の織布工場に住込勤務したものの長く続かず、その後ほしいままに織布工場やパチンコ店等を激しく転々して養親らに所在も明かさず、次第に放恣な生活に耽溺するうち、安易に金員を入手しようと考えて本件非行を犯すに至つたもので、

(一)  知的障害(IQ=62)を有し、判断力に欠け、衝動的に行動し易く、かつ一事に耽溺し易い傾向を示しているうえ、遊惰、無紀律な生活になれていること、

(二)  また、前記の如く長期間養親らを悩ませていたうえ、売春行為により痳菌性子宮内膜炎に罹患していたため、親族らがいずれも少年の処置に窮し、その引取りに難色を示す等、監護を托するに足る保護者も見出せなかつたこと、

等の事情により、前審判時には施設収容による外適当な保護の方策も見出せなかつたことが充分窺われるところ、前記抗告裁判所の決定書に示されているとおり、その後上記帰住先の父方祖父北○甚○において、少年を引取り、専心監護に努める旨申出ているうえ、少年も約六ヵ月に及ぶ収容生活中治療を受けてすでに健康に復し、かつ従前の生活態度を改め更生に努力すべく反省改悔していることも認められるから、この際前記祖父の許へ帰住させて専門的在宅保護を加えれば、その予後には期待して良いものがあると認定し、少年法第二四条第一項第一号、少年審判規則第三七条第一項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 川瀬勝一)

参考二 少年調査票<省略>

参考三 鑑別結果通知書<省略>

参考四 抗告申立書<省略>

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